事故が発生した場合には、事業者において事故記録を作成することが求められている他、状況によっては運輸支局に事故報告や速報を行う必要があります。
本稿ではその事故記録等に関する法令を整理するとともに、必要な様式等を掲載いたします。
特に事故速報については、報告する運輸支局ごとに様式がバラバラになっている状況ですので、各支局の様式をシート別に1つのファイルにまとめてみましたので適宜ご活用ください。
①事故記録について
事故記録に関する法令は、旅客自動車運送事業運輸規則第26条の2に規定があり、解釈運用通達において詳細が定められております。
旅客自動車運送事業運輸規則 第26条の2
旅客自動車運送事業者は、事業用自動車に係る事故が発生した場合には、次に掲げる事項を記録し、その記録を当該事業用自動車の運行を管理する営業所において3年間保存しなければならない。
一 乗務員等の氏名
二 事業用自動車の自動車登録番号その他の当該事業用自動車を識別できる表示
三 事故の発生日時
四 事故の発生場所
五 事故の当事者(乗務員等を除く。)の氏名
六 事故の概要(損害の程度を含む。)
七 事故の原因
八 再発防止対策
解釈運用通達 第26条の2 事故の記録
(1)記録の作成時期は、当該事故発生後30日以内とすること。記録の保存期間は、当該事故発生後3年間とすること。なお、当該記録については書面又は電磁的方法による記録・保存のいずれかでも差し支えない。
(2)各号に掲げる項目の記録の内容については、事故報告規則別記様式の記入等の取扱いに準ずること。このうち、第4号の「事故の発生場所」については、当該場所付近の地図に当該場所を表示したものを添付することで足りる。また、第6号の「事故の概要」については、事故報告規則別記様式の「当時の状況」、「事故の種類」、「道路等の状況」、「当時の運行計画」、及び「損害の程度」に相当する事項を記録することで足りる。ただし、一般貸切旅客自動車運送事業者にあっては、第6号の「事故の概要」については、ドライブレコーダーの記録(「ドライブレコーダーにより記録すべき情報及びドライブレコーダーの性能要件を定める告示」(平成28年国土交通省告示第1346号)第2条第1項の記録をいう。以下同じ。)を含めることとし、第8号の「再発防止対策」を講じるにあたっては、当該ドライブレコーダーの記録を利用しなければならない。
(3)記録は、事故報告規則別記様式を活用して行って差し支えない。この場合、第5号の「事故の当事者(乗務員等を除く。)の氏名」を付記させること。
原因や再発防止が書かれていない記録が散見されます。しっかりと事業者として原因分析や再発防止対策を行い、記録を残すようにしてください。
また、貸切バス事業者においては、ドライブレコーダーの映像記録を利用することが必須となっておりますので、映像データの管理を適切に行うようにしてください。
事故記録の様式例
事故記録簿(PDFファイル)
事故記録簿(Excelファイル)
②事故報告・速報について
自動車事故報告規則 第3条 報告書の提出(抜粋)
旅客自動車運送事業者、貨物自動車運送事業者、特定第二種貨物利用運送事業者及び自家用有償旅客運送者並びに道路運送車両法第50条に規定する整備管理者を選任しなければならない自家用自動車の使用者(以下「事業者等」という。)は、その使用する自動車(自家用自動車(自家用有償旅客運送の用に供するものを除く。)にあつては、軽自動車、小型特殊自動車及び二輪の小型自動車を除く。)について前条各号の事故があつた場合には、当該事故があつた日(前条第10号に掲げる事故にあつては事業者等が当該救護義務違反があつたことを知つた日、同条第15号に掲げる事故にあつては当該指示があつた日)から30日以内に、当該事故ごとに自動車事故報告書(別記様式による。以下「報告書」という。)3通を当該自動車の使用の本拠の位置を管轄する運輸監理部長又は運輸支局長(以下「運輸監理部長又は運輸支局長」という。)を経由して、国土交通大臣に提出しなければならない。
2 前条第11号及び第12号に掲げる事故の場合には、報告書に次に掲げる事項を記載した書面及び故障の状況を示す略図又は写真を添付しなければならない。
一 当該自動車の自動車検査証の有効期間
二 当該自動車の使用開始後の総走行距離
三 最近における当該自動車についての大規模な改造の内容、施行期日及び施行工場名
四 故障した部品及び当該部品の故障した部位の名称(前後左右の別がある場合は、前進方向に向かつて前後左右の別を明記すること。)
五 当該部品を取りつけてから事故発生までの当該自動車の走行距離
六 当該部品を含む装置の整備及び改造の状況
七 当該部品の製作者(製作者不明の場合は販売者)の氏名又は名称及び住所
自動車事故報告規則 第2条 事故の定義
この省令で「事故」とは、次の各号のいずれかに該当する自動車の事故をいう。
一 自動車が転覆し、転落し、火災(積載物品の火災を含む。以下同じ。)を起こし、又は鉄道車両(軌道車両を含む。以下同じ。)と衝突し、若しくは接触したもの
二 10台以上の自動車の衝突又は接触を生じたもの
三 死者又は重傷者(自動車損害賠償保障法施行令(昭和30年政令第286号)第5条第2号又は第3号に掲げる傷害を受けた者をいう。以下同じ。)を生じたもの
※ 自動車損害賠償保障法施行令(昭和30年政令第286号) 第5条 柱書略
第2号 次の傷害を受けた者
イ 脊せき柱の骨折で脊せき髄を損傷したと認められる症状を有するもの
ロ 上腕又は前腕の骨折で合併症を有するもの
ハ 大腿たい又は下腿たいの骨折
ニ 内臓の破裂で腹膜炎を併発したもの
ホ 14日以上病院に入院することを要する傷害で、医師の治療を要する期間が30日以上のもの
第3号 次の傷害(前号イからホまでに掲げる傷害を除く。)を受けた者
イ 脊せき柱の骨折
ロ 上腕又は前腕の骨折
ハ 内臓の破裂
ニ 病院に入院することを要する傷害で、医師の治療を要する期間が30日以上のもの
ホ 14日以上病院に入院することを要する傷害
四 10人以上の負傷者を生じたもの
五 自動車に積載された次に掲げるものの全部若しくは一部が飛散し、又は漏えいしたもの
イ 消防法(昭和23年法律第186号)第2条第7項に規定する危険物
ロ 火薬類取締法(昭和25年法律第149号)第2条第1項に規定する火薬類
ハ 高圧ガス保安法(昭和26年法律第204号)第2条に規定する高圧ガス
ニ 原子力基本法(昭和30年法律第186号)第3条第2号に規定する核燃料物質及びそれによつて汚染された物
ホ 放射性同位元素等の規制に関する法律(昭和32年法律第167号)第2条第2項に規定する放射性同位元素及びそれによつて汚染された物又は同条第5項に規定する放射線発生装置から発生した同条第1項に規定する放射線によつて汚染された物
ヘ シアン化ナトリウム又は毒物及び劇物取締法施行令(昭和30年政令第261号)別表第二に掲げる毒物又は劇物
ト 道路運送車両の保安基準(昭和26年運輸省令第67号)第47条第1項第3号に規定する品名の可燃物
六 自動車に積載されたコンテナが落下したもの
七 操縦装置又は乗降口の扉を開閉する操作装置の不適切な操作により、旅客に自動車損害賠償保障法施行令第5条第4号に掲げる傷害が生じたもの
※ 自動車損害賠償保障法施行令(昭和30年政令第286号) 第5条 柱書略
第4号 11日以上医師の治療を要する傷害(第2号イからホまで及び前号イからホまでに掲げる傷害を除く。)を受けた者
八 酒気帯び運転(道路交通法(昭和35年法律第105号)第65条第1項の規定に違反する行為をいう。以下同じ。)(特定自動運行旅客運送(道路運送法施行規則(昭和26年運輸省令第75号)第6条第1項第9号に規定する特定自動運行旅客運送をいう。以下この号において同じ。)又は特定自動運行貨物運送(貨物自動車運送事業法施行規則(平成2年運輸省令第21号)第3条第3号の3に規定する特定自動運行貨物運送をいう。以下この号において同じ。)を行う場合にあつては、旅客自動車運送事業運輸規則(昭和31年運輸省令第44号)第15条の2第1項又は貨物自動車運送事業輸送安全規則(平成2年運輸省令第22号)第3条第1項に規定する特定自動運行保安員(以下「特定自動運行保安員」という。)が酒気を帯びて特定自動運行用自動車(同法第75条の12第2項第2号イに規定する特定自動運行用自動車をいう。以下この号において同じ。)の運行の業務に従事する行為。第4条第1項第5号において同じ。)、無免許運転(同法第64条の規定に違反する行為をいう。)、大型自動車等無資格運転(同法第85条第5項から第9項までの規定に違反する行為をいう。)又は麻薬等運転(同法第117条の2第1項第3号の罪に当たる行為をいう。)(特定自動運行旅客運送又は特定自動運行貨物運送を行う場合にあつては、特定自動運行保安員が麻薬、大麻、あへん、覚醒剤又は毒物及び劇物取締法(昭和25年法律第303号)第3条の3の規定に基づく政令で定める物の影響により正常な業務ができないおそれがある状態で特定自動運行用自動車の運行の業務に従事する行為)を伴うもの
九 運転者又は特定自動運行保安員の疾病により、事業用自動車の運行を継続することができなくなつたもの
十 救護義務違反(道路交通法第117条の罪に当たる行為をいう。以下同じ。)があつたもの
十一 自動車の装置(道路運送車両法(昭和26年法律第185五号)第41条第1項各号に掲げる装置をいう。)の故障(以下単に「故障」という。)により、自動車が運行できなくなつたもの
※ 道路運送車両法 第41条
自動車は、次に掲げる装置について、国土交通省令で定める保安上又は公害防止その他の環境保全上の技術基準に適合するものでなければ、運行の用に供してはならない。
一 原動機及び動力伝達装置
二 車輪及び車軸、そりその他の走行装置
三 操縦装置
四 制動装置
五 ばねその他の緩衝装置
六 燃料装置及び電気装置
七 車枠及び車体
八 連結装置
九 乗車装置及び物品積載装置
十 前面ガラスその他の窓ガラス
十一 消音器その他の騒音防止装置
十二 ばい煙、悪臭のあるガス、有毒なガス等の発散防止装置
十三 前照灯、番号灯、尾灯、制動灯、車幅灯その他の灯火装置及び反射器
十四 警音器その他の警報装置
十五 方向指示器その他の指示装置
十六 後写鏡、窓拭き器その他の視野を確保する装置
十七 速度計、走行距離計その他の計器
十八 消火器その他の防火装置
十九 内圧容器及びその附属装置
二十 自動運行装置
二十一 その他政令で定める特に必要な自動車の装置
※ 道路運送車両法施行令 第6条
法第41条第1項第21号の特に必要な自動車の装置は、運行記録計及び速度表示装置とする。
十二 車輪の脱落、被牽けん引自動車の分離を生じたもの(故障によるものに限る。)
十三 橋脚、架線その他の鉄道施設(鉄道事業法(昭和61年法律第92号)第8条第1項に規定する鉄道施設をいい、軌道法(大正10年法律第76号)による軌道施設を含む。)を損傷し、3時間以上本線において鉄道車両の運転を休止させたもの
十四 高速自動車国道(高速自動車国道法(昭和32年法律第79号)第4条第1項に規定する高速自動車国道をいう。)又は自動車専用道路(道路法(昭和27年法律第180号)第48条の4に規定する自動車専用道路をいう。以下同じ。)において、3時間以上自動車の通行を禁止させたもの
十五 前各号に掲げるもののほか、自動車事故の発生の防止を図るために国土交通大臣(主として指定都道府県等(道路運送法施行令(昭和26年政令第250号)第4条第1項の指定都道府県等をいう。以下同じ。)の区域内において行われる自家用有償旅客運送に係るものの場合にあつては、当該指定都道府県等の長)が特に必要と認めて報告を指示したもの
自動車事故報告規則 第4条 速報
事業者等は、その使用する自動車(自家用自動車(自家用有償旅客運送の用に供するものを除く。)にあつては、軽自動車、小型特殊自動車及び二輪の小型自動車を除く。)について、次の各号のいずれかに該当する事故があつたとき又は国土交通大臣の指示があつたときは、前条第1項の規定によるほか、電話その他適当な方法により、24時間以内においてできる限り速やかに、その事故の概要を運輸監理部長又は運輸支局長に速報しなければならない。
一 第2条第1号に該当する事故(旅客自動車運送事業者及び自家用有償旅客運送者(以下「旅客自動車運送事業者等」という。)が使用する自動車が引き起こしたものに限る。)
二 第2条第3号に該当する事故であつて次に掲げるもの
イ 2人(旅客自動車運送事業者等が使用する自動車が引き起こした事故にあつては、1人)以上の死者を生じたもの
ロ 5人以上の重傷者を生じたもの
ハ 旅客に1人以上の重傷者を生じたもの
三 第2条第4号に該当する事故
四 第2条第5号に該当する事故(自動車が転覆し、転落し、火災を起こし、又は鉄道車両、自動車その他の物件と衝突し、若しくは接触したことにより生じたものに限る。)
五 第2条第8号に該当する事故(酒気帯び運転があつたものに限る。)
2 前条第3項の規定は、前項の規定により運輸監理部長又は運輸支局長が速報を受けた場合について準用する。
3 第1項の規定にかかわらず、主として指定都道府県等の区域内において自家用有償旅客運送を行う者の場合にあつては、同項各号のいずれかに該当する事故があつたとき又は当該指定都道府県等の長の指示があつたときは、当該指定都道府県等の長に速報するものとする。
事故だけでなく、車両故障の場合でも報告が必要なケースがあります。
(リコールにならないかどうか確認する目的もあるという話を聞いたことがあります)
また、報告規則上は厳密には報告対象でない事故や故障であっても、運輸支局側の判断により、事業者に報告書を出してもらうように依頼を行うケースもあるそうです。報告が必要かどうか判断が難しい場合には運輸支局の保安担当にご相談ください。
事故報告の様式例等
事故報告書取扱要領(令和6年10月1日改正)(PDFファイル)
事故報告書様式(Excelファイル)
事故報告書別表2(健康起因関係)(Excelファイル)
事故報告書別表3(車両故障関係)(Excelファイル)
事故報告書別表3(車両故障関係)(Wordファイル)
事故速報の様式例等
事故速報フロー・連絡先等情報(PDFファイル)
事故速報様式(Excelファイル) ※都県ごとにシートが分かれています