「運転者台帳」とか「乗務員台帳」とかいろんな呼び方があるかと思いますが、現段階での法令上の正確な言葉は「乗務員等台帳」となります。
言葉を分割して説明するとこんな感じになります。
運転者=実際に車両を運転する人の呼び方
乗務員=運転者だけでなく、車掌や添乗員といった運転業務は行わないけど車両に乗って業務を行う人を含めた呼び方
乗務員等=乗務員のほかに「特定自動運行保安員」を含めた呼び方
実は「乗務員等」という言葉が最初に出てくるのは、旅客自動車運送事業運輸規則第7条の2「運送引受書」の記載事項に関する条文です。
参考までに以下に条文を挙げておきます。
旅客自動車運送事業運輸規則 第7条の2 (運送引受書の交付)
第7条の2 一般貸切旅客自動車運送事業者は、運送を引き受けた場合には、遅滞なく、当該運送の申込者に対し、次の各号に掲げる事項を記載した運送引受書を交付しなければならない。
一 事業者の名称
二 運行の開始及び終了の地点及び日時
三 運行の経路並びに主な経由地における発車及び到着の日時
四 旅客が乗車する区間
五 運転者、車掌その他の乗務員(第15条の2第1項に規定する特定自動運行保安員(以下この号において「特定自動運行保安員」という。)を除く。第49条第1項及び第3項において同じ。)及び特定自動運行保安員(以下「乗務員等」という。)の休憩地点及び休憩時間(休憩がある場合に限る。)
六 乗務員等の運転又は業務の交替の地点(運転又は業務の交替がある場合に限る。)
七 運賃及び料金の額
八 前各号に掲げるもののほか、国土交通大臣が告示で定める事項
2 一般貸切旅客自動車運送事業者は、前項の規定による運送引受書の写しを運送の終了の日から3年間保存しなければならない。
3 一般貸切旅客自動車運送事業者は、運送の申込者に対して当該運送の引受けに際し手数料又はこれに類するものを支払つた場合には、その額を記載した書類を、前項の運送引受書の写しとともに、当該運送の終了の日から3年間保存しなければならない。
第7条の2第1項第5号の中で「乗務員等」という言葉が定義づけられているのが分かるかと思います。
特定自動運行保安員というのは、簡単に言ってしまえば、「自動運転を行うバスに乗務はしているが、直接運転を行うわけではなく、自動運転のバスに何かトラブル等が起きた場合に対応を行う人」というイメージです。直接運転を行うわけではないので運転者とは言えず、また車掌や添乗員とも異なる業務内容があるため、このような職責の者を定めたものです。
現状貸切バスにおいてこの特定自動運行保安員が乗務するような自動運行についてはほとんどないと思われますが、用語の定義はしっかりと把握しておきましょう。
さて、そんな「乗務員等台帳」ですが、「一定の要件を満たさない者について旅客自動車運送事業用自動車の運転者等として選任することを禁止したが、これらの違反を防止するとともに個々の運転者等の状況を適確に把握するため」(解釈運用通達抜粋)に作成が義務付けられているものです。常に最新の情報を台帳に整理することを心掛けてください。
乗務員等台帳の記載事項は、旅客自動車運送事業運輸規則第37条に定めがあります。
旅客自動車運送事業運輸規則 第37条 抜粋
一 作成番号及び作成年月日
二 事業者の氏名又は名称
三 運転者等の氏名、生年月日及び住所
四 雇入れの年月日及び運転者等に選任された年月日
五 運転者に対しては、道路交通法に規定する運転免許に関する次の事項
イ 運転免許証又は道路交通法第95条の2第2項第1号に規定する免許情報記録(第3項において「免許情報記録」という。)の番号及び有効期限
ロ 運転免許の年月日及び種類
ハ 運転免許に条件が付されている場合は、当該条件
六 運転者の運転の経歴
七 事故を引き起こした場合は、その概要
八 運転者に対しては、道路交通法第108条の34の規定による通知を受けた場合は、その概要
九 運転者等の健康状態
十 運転者に対しては、次条第2項の規定に基づく指導の実施及び適性診断の受診の状況
十一 乗務員等台帳の作成前6月以内に撮影した単独、無帽、正面、無背景の写真
旅客自動車運送事業者は、事業用自動車の運転者が転任、退職その他の理由により運転者でなくなつた場合には、直ちに、当該運転者に係る前項の乗務員等台帳に運転者でなくなつた年月日及び理由を記載し、これを3年間保存しなければならない。
解釈運用通達 第37条 抜粋
本条の趣旨は、第36条において一定の要件を満たさない者について旅客自動車運送事業用自動車の運転者等として選任することを禁止したが、これらの違反を防止するとともに個々の運転者等の状況を適確に把握するため、事業者に対し、乗務員等台帳の作成を義務付けるとともに、一般乗用旅客自動車運送事業者に対しては、事業用自動車に乗務する運転者に乗務員証の携行を義務付けるものである。
(1) 乗務員等台帳の作成・記載(第1項)
① 第1号の運転者等ごとの作成番号及び台帳の編てつの順序は、選任の順によるものとし、事業者ごと(2以上の営業所を有する場合にあっては、営業所ごと。)に一連の番号を付すものとし、枝番号を付しあるいは番号の重複することがないようにさせること。なお、暦年別に番号を更新するときは暦年の表示が、営業所別に別の番号を付する場合には営業所の表示が記号等により容易に理解できることが望ましい{例えば、14(暦年)-丸の内(営業所)-033(運転者)}。なお、転任、退職等により運転者等でなくなった者に付した作成番号は、永久に欠番とするものとし、これを再使用してはならない。
② 第5号の運転免許に関する事項については、個々の運転者の状況を適確に把握する観点から、当該事項に変更が生じた場合には、直ちに乗務員等台帳に当該変更事項を記載させること。
③ 第6号の「運転者の運転の経歴」については、運転経歴の適確な把握により、個々の運転者の状況に応じたきめ細やかな指導監督の実施を図ろうとするものであり、一般貸切旅客自動車運送事業者においては、選任する貸切バスの運転者については、以下の事項(以下「運転の経歴」という。)を記載させること。ハ.に掲げる車種区分については、乗務する車種区分に変更を生じた場合ごと、遺漏なく記載させること。
イ.事業者の氏名又は名称
ロ.運転者として選任されている期間
ハ.主に乗務する貸切バスの車種区分(「一般貸切旅客自動車運送事業の許可及び事業計画変更認可申請の処理について」(平成11年12月13日付自旅第128号、自環第241号)別紙1(3)①による区分をいう。)
(参考)「一般貸切旅客自動車運送事業の許可及び事業計画変更認可申請の処理について」別紙1(3)①
車種区分については、大型車、中型車、小型車及びコミューター車の4区分とし、区分の基準は次のとおりとする。
大型車・・・車両の長さ9メートル以上又は旅客席数50人以上
中型車・・・大型車、小型車、コミューター車以外のもの
小型車・・・車両の長さ6メートル以上8メートル以下で、かつ旅客席数33人以下
コミューター車・・・車両の長さ6メートル未満で、かつ旅客席数14人以下
原文全部を閲覧したい方はこちらから(PDFファイル)
ただし、平成28年11月1日以降に選任した運転者については、過去に他の一般貸切旅客自動車運送事業者において選任された経験を有する場合には、直近に選任した事業者について、運転の経歴に掲げる事項を記載させること。この場合、他の一般貸切旅客自動車運送事業者における経歴については、運転者の雇入れ時に提出された履歴書(運転の経歴を記載したものに限る。)の写しを添付することで代えることができる。また、平成28年11月1日前に選任した運転者については、同月時点からの運転の経歴を記載させるとともに、それ以前の運転の経歴については、積極的に記載することが望ましい。
なお、一般貸切旅客自動車運送事業者以外の旅客自動車運送事業者においても、個々の運転者の状況に応じたきめ細やかな指導監督の実施を図るため、運転の経歴については、積極的に一般貸切旅客自動車運送事業者に準じて記載することが望ましい。
④ 第7号の「事故を引き起こした場合」とは、原則として、当該運転者等が当該事故の発生に最も大きな責任を有する場合(いわゆる第一当事者である場合)を指し、明らかにいわゆる第二当事者以下の当事者である場合は記載しなくてよい。当該運転者等が第一当事者であるかどうか直ちに判断することができない場合は、第一当事者であるかどうか判断を保留する旨を付して記載させること。この場合、後に自動車保険の支払査定、示談又は裁判等の結果により第一当事者であるかどうかの判断をすることができたときに、その旨を記載するとともに、その判断の根拠とした資料の写しを添付させること。
⑤ 第7号の「事故を引き起こした場合」には、第26条の2に基づく当該事故の記録の作成に併せて乗務員等台帳に事故の発生日時、事故の発生場所及び事故の概要(損害の程度を含む。)を記載させること。この場合、当該事故の記録の写しを添付するか、又は、事故の発生日時及び損害の程度を乗務員等台帳に記載し、それ以外については当該事故の記録の作成番号等容易に事故の記録を参照できるようにするための情報を記載することで代えることができる。
⑥ 第8号の「道路交通法第108条の34の規定による通知を受けた場合」には、通知の内容に基づき、乗務員台帳に違反の種別、年月日及び場所を記載させること。また、通知がない場合であっても、運転者が事業用自動車の運行中に道路交通法の規定に違反して処分された場合には、極力自主的に運転者から事業者に報告させ、報告があったときには、同様に乗務員台帳にその概要を記載するよう指導すること。
⑦ 第9号の「運転者等の健康状態」については、労働安全衛生規則(昭和47年労働省令第32号)第51条の規定に基づいて作成された健康診断個人票又は同令第51条の4に基づく健康診断の結果の通知の写しを添付することで足りる。
⑧ 乗務員等台帳の作成については、国土交通省の所管する法令に係る民間事業者等が行う書面の保存等における情報通信の技術の利用に関する法律施行規則第5条第1項の規定により、書面の作成に代えて乗務員等台帳に係る電磁的記録の作成を行うことができる。
(2) 乗務員等台帳の保存(第2項)
運転者等でなくなった者に係る乗務員等台帳は、3年間の保存が必要であるが、運転者等でなくなった年月日及び理由の記載は朱書きとすることが望ましい。また、国土交通省の所管する法令に係る民間事業者等が行う書面の保存等における情報通信の技術の利用に関する法律施行規則第3条第1項の規定により、書面の保存に代えて乗務員等台帳に係る電磁的記録の保存を行うことができる。
特に注意すべき点(基本的には上記内容を抜粋したものです)
・記載不備が大変多い帳票となっております。一度作成したら終わりではなく、定期的に記載内容を確認し、更新する必要があります。
・作成番号は重複しないよう注意してください。一度使った作成番号はその後退職した場合永久欠番です。使いまわしはできません。
・運転免許証の内容、健康診断や適性診断、特別な指導についての更新忘れに注意。不備が目立ちます。
・運転経歴は、過去の経歴だけでなく、「自社で主にどの車種区分に乗務するのか」を記載してください。
なお、1年間の間にハンドル時間20時間に満たない車種区分には乗務できなくなります(準初任運転者)。
・退職等で運転者等でなくなった者の台帳については、運転者等でなくなった年月日及び理由を朱書きしてください。
なお、この運転者等でなくなった場合についてですが、複数の事業(例:乗合と貸切)の運転者を兼任していて、ある事業のみ運転者から外す(例:乗合専任として貸切には乗務しなくなる)場合は、その兼任解除の年月日と理由を記載するようにしてください。
乗務員等台帳の様式は以下からご利用ください。
乗務員等台帳様式(Excelファイル)