令和7年5月15日付記事「【パブリックコメント開始】一般貸切旅客自動車運送事業における旅行業者等との過大な手数料等の取引に関する道路運送法の取扱いについての意見募集について」において、手数料の取扱いに関してパブリックコメントが開始された旨のご案内をしておりましたが、パブリックコメントが6月19日付で締め切られ、6月20日付で通達が発出されましたのでご案内いたします。
以下ファイルはすべてPDFファイルです
適正化センターあて通知文書
通達本文
新旧対照表
パブリックコメントの結果概要等
今まで出ていた通達から変わった箇所が何点かありますので概要をご案内します。
1.手数料等を支払う相手方について
従前は、「旅行業者、旅行業者代理業者及び旅行サービス手配業者(以下「旅行業者等」という。)」に対して手数料と支払う場合の取扱いに限定されていましたが、改正通達では「(いずれも旅行業法(昭和27 年法律第239 号)に基づく登録の有無を問わない。以下同じ。)」という記述が追加されました。これは、旅行業法に基づく登録を行わないまま手数料等の取引を行っている事業者に対しても効力を及ぼすためのものになります。
なお、いわゆる葬儀会社から葬儀の仕事を引き受け、それに対して手数料等を支払っているケースが巡回指導等で確認されておりますが、これについては本件の対象に含まれないこととなります(すなわち安全コスト云々の話ではなく、手数料を支払った結果下限を下回った場合には、道路運送法第9条の2の届出運賃違反となります)。
2.実費の取扱いについて
従前は、「基本的には旅客が全額を負担するものであるが、駐車場代、有料道路代、昼食代、ガイド料など貸切バス業者が立て替えただけの実費に対して貸切バス業者が旅行業者等に手数料等を支払っている場合は、原則、運賃・料金の手数料等と合算した当該支払いにより届け出た運賃の下限額を実質的に下回っている場合は運賃の割戻しの審査対象とする。」とされていたところが、「基本的には旅客が全額を負担するものであるが、駐車場代、有料道路代、昼食代、ガイド料など貸切バス業者が立て替えただけの実費に対して貸切バス業者が旅行業者等に手数料等を支払っている場合は、道路運送法第9条の2第1項の運賃料金変更事前届出違反に該当する。」として取扱いが大きく変更されました。
簡単にいってしまえば、立て替えただけの実費に対する手数料取引は運賃違反に該当するという形になります。下限額を下回っているかどうかは関係ありません。
では、この実費の収受に対して手数料を支払う旨の独自運賃を設定することができるかどうか、という論点が出てきますが、基本的には認められない形になると思われます。
理由としては、標準運送約款第14条において、「ガイド料、有料道路利用料、航送料、駐車料、乗務員の宿泊費等当該運送に関連する費用は、契約責任者の負担とします。」という取り扱いがされているため、独自運賃で実費に対する手数料取引を入れるとした場合、運送約款に抵触することになってしまい、届出された独自運賃に対する変更命令の対象となってしまいます。ではさらに、その運送約款を独自約款として変更すればいいのではないか、という考えもあるかと思いますが、認可を受けようとしても道路運送法第11条第2項の認可基準に抵触するため、そのような約款の認可を行うことができない、という取り扱いになってしまうものと考えられます。
ただし、実際にこのような申請の事例が出ているわけではありません。あくまでも制度趣旨に鑑みてこのような結論になるのでは、という見解となります。
3.情報の共有について
新通達において「貸切バス業者に対する指導において運賃の割戻しの対象とすべきか否か適正に判断するため、一般貸切旅客自動車運送適正化機関に対して、届出安全コスト額を共有するものとする。」とされております。別記事「【正式通達】一般貸切旅客自動車運送事業者の原価報告書の報告について」にも掲載している通達「一般貸切旅客自動車運送事業者の原価報告書について」(PDFファイル)の中で「原価報告書は事業者の原価や安全コスト額が含まれており、不正競争防止法(平成5年法律第47 号)に基づく営業秘密として損害賠償や罰則の対象となるおそれがあるため、取扱いには十分留意すること。」という注意文言が付記されていることを申し添えます。