貸切バスを利用するにあたって、運送事業者と利用者との間で取り交わす契約内容をまとめているものが運送約款です。

道路運送法の第11条において、運送約款について規定されています。

道路運送法 第11条 (運送約款)

一般旅客自動車運送事業者は、運送約款を定め、国土交通大臣の認可を受けなければならない。これを変更しようとするときも同様とする。
2 国土交通大臣は、前項の認可をしようとするときは、次の基準によつて、これをしなければならない。
一 公衆の正当な利益を害するおそれがないものであること。
二 少なくとも運賃及び料金の収受並びに一般旅客自動車運送事業者の責任に関する事項が明確に定められているものであること。
3 国土交通大臣が一般旅客自動車運送事業の種別に応じて標準運送約款を定めて公示した場合(これを変更して公示した場合を含む。)において、当該事業を経営する者が、標準運送約款と同一の運送約款を定め、又は現に定めている運送約款を標準運送約款と同一のものに変更したときは、その運送約款については、第1項の規定による認可を受けたものとみなす。

運送約款は必ず定めなければならず、かつ、その内容について、国の認可を受けなければならないものとされているわけです。
認可に関する手続きについては、道路運送法施行規則に規定があります。

道路運送法施行規則 第11条 (運送約款の認可申請)

法第11条第1項の規定により、一般旅客自動車運送事業の運送約款の設定又は変更の認可を申請しようとする者は、次に掲げる事項を記載した運送約款設定(変更)認可申請書を提出するものとする。
一 氏名又は名称及び住所並びに法人にあつては、その代表者の氏名
二 事業の種別
三 設定又は変更しようとする運送約款(変更の認可申請の場合は、新旧の運送約款(変更に係る部分に限る。)を明示すること。)
四 変更の認可申請の場合は、変更を必要とする理由

道路運送法施行規則 第12条 (運送約款の記載事項)

法第11条第1項の規定による一般旅客自動車運送事業の運送約款に定める事項は、次のとおりとする。
一 事業の種別
二 運賃及び料金の収受又は払戻しに関する事項
三 運送の引受けに関する事項
四 運送責任の始期及び終期
五 免責に関する事項
六 損害賠償に関する事項
七 その他運送約款の内容として必要な事項

新規許可事業者等で新しく運送約款を定める場合には「設定」、すでに使用している運送約款の内容を変える場合には「変更」という言い方をします。

ところで、ほとんどの事業者において「はて、そのような手続きをした記憶がないぞ」という印象があるのではないでしょうか。
上記道路運送法第11条第3項において、いわゆる「標準運送約款」を使用する場合には認可は不要である、という規定がなされており、大半の事業者がそれに倣っている形になるからです。

事業者自身が定めた運送約款のことを、「独自約款」という言い方をすることがあります。
貸切バス事業者ではあまり例が少ないかと思いますが、他の業態において、いわゆる暴力団排除に関する条項を定めるケースがありました。
標準約款をベースに条項を追加する場合でもそれは全体として独自約款扱いになりますので、認可を受ける必要があります。

なお、運送約款については、適切な方法で「公示」を行う必要があります。
旅客自動車運送事業運輸規則において定めがあります。

旅客自動車運送事業運輸規則 第4条 (運賃及び料金等の実施等) ※貸切バス事業に関する部分のみ抜粋

一般旅客自動車運送事業者は、運賃及び料金並びに運送約款を公示した後でなければ、これを実施してはならない。
2 前項の規定による公示は、営業所において公衆に見やすいように掲示するとともに、次に掲げる一般旅客自動車運送事業者の区分に応じ、それぞれ次に定める方法により行うものとする。
二 一般貸切旅客自動車運送事業者 次のいずれかに該当する場合を除き、当該一般貸切旅客自動車運送事業者のウェブサイトへの掲載
 イ 一般貸切旅客自動車運送事業に常時使用する従業員の数が20人以下である場合
 ロ 一般貸切旅客自動車運送事業者が自ら管理するウェブサイトを有していない場合

運送約款と運賃料金表(適用方含む)は、以下の2通りの方法で「公示」する必要があります。
①営業所において公衆に見やすいように掲示する
②一定の要件を満たす事業者は、①に加え、ウェブサイト(会社のホームページ)に掲載する

①については、「事務員等にしか見えない位置」では「不適切」であり、「営業所を訪問した人が確認できる位置」に掲示する必要があります。
ただし、いわゆる1ページずつ壁に全部貼り付けるようなことまでは求められておらず、例えば来客対応するスペースに紐で綴じたものをぶらさげておいたり、紙ファイル等に整えて利用者が自由に閲覧できるような状態になっていれば可とされています。

②については、令和6年6月30日の改正で新たに追加されたルールで、いわゆるDX(デジタルトランスフォーメーション)に伴う規定です。
対象事業者は以下の2つの要件を同時に備えている事業者になります。
要件1:常時使用する従業員の数が21人以上である場合
要件2:事業者自らが管理するウェブサイト(≒会社のホームページ)を有している場合
「従業員」21人以上になるので、運転者が20人に満たなくても、事務員等合わせて21人以上になれば該当する点があげられます。一方、「一般貸切旅客自動車運送事業」に常時使用する従業員なので、例えばですが、旅行業と貸切バス事業とを行っている事業者において、従業員は全部で40人だが、内訳を見た場合に、旅行業の担当が25人、貸切バス事業の担当が15人、各事業間における兼務はなし、となっているような場合には、対象外になります。

最近はホームページを有する事業者も増えてきているかと思いますので、事業規模に関係なく運賃料金・適用方・運送約款を掲載しておいていただければと思います。

標準運送約款については以下から取得可能です。標準運送約款が改正された場合にはこちらに最新版を掲載していきます。
 令和6年8月30日版